「デコつけまつげ」で知られる個人ブランド「実柚季のまつげ」の初の個展「翅〜はね〜」が、2017年1月17日〜22日の会期で開催され、ロリータ活動家の愛さんと一緒に、個展に遊びに行ってきました。
個展訪問の際に、デザイナーの実柚季(みゆき)さんに対し、愛さんによるショートインタビューを実施いたしました。この記事では、そのインタビューの様子をお送りしてまいります。
個展の全体的なレポートはここちら:
実柚季のまつげ初個展「翅~はね~」に行ってきた!
「翅」って、どういう意味?
──まずは今回の個展のテーマについて伺います。「翅(はね)」という見慣れない漢字を使われていますが、こちらはどういった意味なのでしょうか?
この「翅」という漢字は、「虫のハネ」を指すものです。蝶や蛾、トンボやセミなどの翅を扱った「翅まつげ」というものを作って展示する、というのがこの個展のテーマです。
なので、「鳥の羽根」や「天使・悪魔の羽根」とはちょっと違った、虫にフィーチャーしたようなまつげを、今回は展示しています。
──「毛がある感じ」ではなくて、「透明感がある感じ」ですね。
そうですね。蝶や蛾はよく標本になっていると思いますが、私のまつげ作品も、普段から標本箱のようなパッケージに入れて販売しているんです。
今回は、さらに生々しさを追求して、虫の標本をイメージしたまつげに絞って、作ってみました。
──もともと虫全般や蝶・蛾に興味があったんですか?
はい。蝶や蛾の翅の模様や質感が魅力的だな、と常々思っています。
つけまつげを作る活動をはじめた当初から、蝶をモチーフにしたデザインのまつげを、翅のパーツの段階から自分で作ったりしていました。
意識的に「こういうところが好き!」というよりは、どこか意識の奥で潜在的にずっと「これいいな〜」と思っていたのがずっと続いていたような感じです。
「デコつけまつげ」の原点
──先ほど「活動を始めた当初」というお話がありましたが、どんなきっかけがあって、まつげ作家としての活動を始められたのでしょうか?
私はもともとヘアメイクのスクールに通って、ヘアメイクの勉強をしていました。学校にはおしゃれな人が多く、彼らを見て、私も服やメイクを楽しみたいと思い、例えば簡単なラインストーンを顔に乗せたりしていました。
その当時、愛さんが主宰されていた「ゴシック・ロリータ・パンクの会(現 Wonder Teatime)」というサークルが、学園祭でファッションショーをされた際に、私も裏方のメイクとしてお手伝いしていたのですが、そのファッションショーの手伝いが、デコつけまつげを作ることになった一番のきっかけです。
ファッションショーでは、モデルさんの数が多く、一人ひとりにしっかりメイクする時間がなかったんですよね。
──あれは本当に修羅場でしたね〜…(涙)
メイクをするほどの時間が無いので、どうしようかと考えた時に、あらかじめデコレーションをしたつけまつげを作っておけば、現場では糊を塗ってつけるだけで、時間をかけずに華やかさを演出できる、ということを思いついたんです。
それがきっかけとなって、「デコつけまつげ」を本格的に作り始めるようになりました。ロリィタの展示即売会に出展したり、というのをちょっとずつ始めたのも、それからです。
もともとメイクをやりたかったのですが、メイクの世界には偉大なるメイクアップアーティストの先輩たちがすでにたくさんいらっしゃるんですよね。
それだったら、まつげで自分のやりたことを表現するのが適しているのではないか、とだんだん思うようになって、決心して本腰を入れて、まつげづくりをやるようになりました。
──では、今はヘアメイクというよりは、まつげのほうに軸足をおいて活動されているのでしょうか?
はい。とにかくひたすら、家でせっせせっせとまつげを作っております。
──となると、部屋の中はまつげだらけですか?
そうですね。作業しているスペースでは、オリジナルのパーツをものすごくたくさん並べて乾かしているような状態です。
乾かすのにも時間がかかるので、複数の作品の、異なる工程を同時進行で進めています。
どうやって作ってるの?
──1個あたりの制作にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
物にもよりますが、今回の展示しているようなリアルな虫まつげは、3〜4日かけて少しずつ工程を進めるような感じです。
原型を作って、色を塗って、乾かして、接着して、また乾かして…という形で、なんやかんやで時間がかかる工程が多いですね。
──ものづくりを全くしない私からすると、どんな材料でどうやって作っているのか想像もつかないのですが、材料や作り方についてお答えできる範囲で伺ってもよろしいですか?
パーツ自体、一からオリジナルで作っています。
ワイヤーを用意し、ワイヤーに合成樹脂で膜を貼り、それをしっかり曲げて形を変えて、筆で色を塗って、その上にそれぞれの蝶にあった加工や塗装をします。
そうやって作った翅パーツをまつげに接着し、仕上げていきます。
工程はほぼ全て手作業なので、過去に作ったものと全く同じものを作るのは不可能です。
ある程度のクオリティは保とうとしていますが、どうしても多少の個体差が出てしまいます。これは本物の蝶や蛾と同じとも言えますね。ハンドメイドならではの部分もあるのかな、と思っています。
「実柚季のまつげ」のこれから
──今後はどういう方向に展開していきたいとお考えですか?
活動を始めるきっかけとなった「貼り付けるだけでメイクアップが華やかになる」という原点を一番大事にしたいと思っています。
まつげももちろんどんどん進化させていきたいですし、まつげ以外の「フェイスデコアイテム」、たとえばシールなども、いずれできたらいいなという展望はあります。
みんなが気軽にメイクを華やかに楽しめるようになるアイテムを作っていきたいですね。
──なるほど。まつげそのものにはこだわらず、「つけることで華やかになるアイテム」を開発していく感じですね。
まつげもまつげで、より細かく美しいものやリアルなもの、まばたきという「動き」がある部位であることを活かしたものなども作っていきたいですし、恐らく私の傾向として、どんどん派手になっていく気はします(笑)。
いずれにしてもメイクが楽しくなるアイテムづくりを、5年10年と頑張っていきたいですね。
──東京オリンピックの頃には、きっとすごい作品ができていることを期待してますね!
頑張ります!
──ありがとうございました!
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