音楽とファッションの融合、Brilliant Star☆デコレーションズ(ブリデコ)のvol.9「宝石姫」が9/21に開催されます。今回は初の2部構成ということで、今までよりもさらにゴージャスになること間違いなしです。
KawaCuraでは、イベント本番に先立って、ブリデコのリハーサルにお邪魔し、主催のBABIさん・Kaieさんに事前インタビューを実施。今回のショーの見どころや、ブリデコの今後の展望について伺いました。
(取材・文:Roki)
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BABI&Kaie プロフィール
BABI(左)
文筆業。雑誌「ゴシック&ロリータバイブル」の連載でもお馴染み。ブリデコではシナリオや台詞等、ショー全体の構成を担当。
Kaie(右)
ファッションデザイナー。自身の主宰するブランド「Triple*fortune(トリプルフォーチュン)」のデザイナーを務める。ブリデコでは衣装製作とブランドの出展交渉を担当。
ブリデコとは?
「Brilliant Star☆デコレーションズ」通称「ブリデコ」は、ゴシック&ロリィタの総合的なファッションイベントです。ファッションショーと音楽ライブやナレーション、演劇、ダンスがひとつの「物語」として構成されているのが大きな特徴。
ロビーでは物販ブースが展開され、参加ブランドの商品を買うことができます。スナップ撮影や、一般参加者によるファッションコンテストも人気。参加者の多くは「過剰装飾」と呼ばれる、装飾を大量に施したファッションをしています。
ブリデコの内容については、4/25に開催されたvol.8の参加レポートに詳しく記載しています。そちらもぜひ参照してください。
→ 【イベントレポート】ブリデコvol.8「少女天使」に行って来た!
ブリデコの始まり
──まずはブリデコのそもそもの成り立ちから伺わせてください。ブリデコは「ファッションショーに音楽とシナリオ」という他にない形のイベントですが、そもそもどういう経緯で始まったのでしょうか?
Kaie(以下「K」)きっかけのひとつは、お茶会です。私がゴスロリ服のデザインを始めくらいの頃、あるゴスロリブランド主催のお茶会が関西であって、「お茶会」というものを知りました。「同じファッションを好きな人たちが、その服を着て集まって交流する…なんて素敵なんだろう」と思って、東京でも開催し始めたんです。
たぶん、東京で「ロリィタのお茶会」というものを最初にやったのは私たちだと思うんですよ。参加者の募集をしたら、はじめは「お茶会って何ですか?」という質問が来ましたからね。
BABI(以下「B」) 当時はそういう場が少なかったので、「同じファッションが好きな人たちが集まってファッションについて語り合える場所を作ろう」という趣旨で始めました。
ただ集まってお茶を飲んで、お喋りして写真を撮るだけでも最初は楽しかったんですけど、それだけだともったいないと思ったので、お茶会の中で「クリノリン(※)とはそもそも何であるか」みたいな服飾の文化的背景を話たり、ヴィクトリアン時代の絵本の話をしたり、詩の朗読をしたりするような形を取り始めました。
※クリノリン:1850年代にイギリスで使われていた、スカートを大きく膨らませるための骨組み状の下着。
クリノリンをつけた様子(Wikipediaより)──面白そうですね。個人的にすごく行きたいです(笑)。
B: それが徐々に大きくなって、募集すると一気に80人とか100人とか集まるようになってしまったんです。それくらい多くなると、私たち二人ではコントロールが利かなくなって来るんですよ。
「お茶会」としてやるなら、参加者一人ひとりとゆっくり交流したいじゃないですか。でも100人規模になるとそれができないんですよね。
──100人規模のお茶会…結婚披露宴みたいですね。
B: よくそう言われてました(笑)。二人でマイクを持ってテーブルを回って、みたいな感じでしたから。
K: ちょっと「お茶会」という形では収拾がつかなくなってきました。でも、せっかく同じファッション好きがこれだけ集まるなら、別の形のイベントの方に変えた方がいいかな、という話が出始めたんです。
──始まりはお茶会だったんですね。
B: それとは別に、私たち二人で歌と語りのライブ活動をしていたんですけど、その両方をくっつけて「ファッションと音楽でKawaiiカルチャーのイベントをしよう」というアイディアが浮かびました。
K: ちょうど同時期に、これは本当に偶然なんですけど、プロデュースや音楽面でのバックアップなどのご縁ができたりして、「ファッションショーのあるライブ」という形で開催するためのいろいろな一気に条件が揃ったんです。そこから「ブリデコ」がスタートしました。
服好きなら、誰でも歓迎
K: ブリデコを始めるときに決めたのは「ブランド縛り」をやらないことです。トリプルフォーチュンというブランド主催のイベントだけど、トリプルフォーチュンの服を着ていなくても全然かまわない。
B: それ以前のお茶会の時から、一度も縛っていないんですよ。トリプルの服を着ていないとダメ、というのは一度もやったことがないんです。
K: 洋服好きなら何でもいい、着道楽だったらOK、みたいな。「あなたの家のタンスの中にある、一番好きな洋服を着てきてください」という感じ。
──ブランド主催のお茶会には、「そのブランドの服をメインにしたコーディネートで参加する」という条件がつくことが多いですよね。
B: もちろんそれは「お得意様への感謝イベント」という考え方だから、私たちはもちろんそれを悪く言うつもりは全くありません。企業として当然のことだと思いますし、好きで遊びに行くこともありますから。
K: ただ、私たちの場合は趣旨が違っていて、「文化服飾活動」というスタンスで活動しているので。いずれはゴスロリに限らず、デコラやゆめかわいい等も含めたKawaiiカルチャー全般に広げていきたいです。
B: そこが、いわゆる「ブランドのお茶会」とは一番違うところですね。
──ショーで使われた服や小物がその後すぐに買えるのも特徴的ですよね。
K: そうですね。たとえば宝塚や帝国劇場のショーを見て「素敵! こんな洋服欲しい!」と思っても、普通は買えないんですよね。
なので「ショーで見たものをその場で買えるしくみ」があれば素敵なんじゃないかな、という漠然とした考えから始まりました。
B: それが今のキャッチコピーのひとつ「来て、見て、買える!」につながっているわけです。
初の昼・夜2回公演!
──今回のショーの見どころを教えてください。
B: 第1回を2012年1月にブリデコ始めて、サンリオピューロランドでの開催も合わせると通算11回目になるんですけど、今回は初めて「1日2回公演」をやるんですよ。昼の部と夜の部とではファッションショウは全く違いますが、両方見ると内容が繋がっていることが分かります。
──フライヤーに「昼の部」「夜の部」とあるのを見て驚きました。なぜ2回やることになったんでしょうか?
K: 書きたいことが多すぎてこぼれちゃった、みたいな感じですね。「宝石姫」という今回のコンセプトがあって、宝石そのものの話もしたいし、その「宝石姫という人形」の話もしたいということになって、二つの要素を一つのステージに詰めるのが厳しくなってしまったんです。
B: それとありがたいことに、参加して下さるブランド様が増えた、ということがもうひとつの要因としてあります。ここ2年くらいブリデコを見てもらって、「いろいろなブランドとコラボレーションしてファッションショーをやる」という意図を理解して貰えるようになって来たんです。
2回分のショーができるほどのブランド数になったので、ストーリーも出展ブランドも異なる2回の公演をやることにしました。
──今回、特に注目してほしいところはありますか?
B: 前回から、ストーリーに沿って後ろのスクリーンに映像を出すようにしているんですが、今回もあります。また、語りだけでなく、歌でも物語を表現していますが、今回は新曲もあるので、そこも聞いてほしいですね。
K: 服の方でいうと、トリプルフォーチュンの新作がたくさん出ます。新しいプリントもありますし、今回は無地と和調をちょっと多めにして、バリエーションを増やしていますね。総レースなどゴージャスなものもあるので、注目してほしいです。
進行はすべて、秒単位で計算しています
──イベントの準備や運営で大変なことはありますか?
B: 「音楽の尺に合わせてMCをする」というのが、最初は難しかったですね。普通の歌のライブでは、MCの尺が秒単位で決まっていたりはしないじゃないですか。でもブリデコでは、流れている音楽の盛り上がりに変化があるので、それに合わせてスクリーンの映像の切り替えや「この台詞をいつ言い始め、何分何秒で言い終える」というのを細かく全部決めています。
K: それを演じるには、ミュージカルと同じようなスキルが必要になるんですよね。でも私たちはミュージカルの経験があるわけではないので、そこが大変でした。
──そうすると、モデルさんたちの歩く速さや時間も決まっていると。
B: そうですね。モデルのウォーキングも、何秒でどこを歩くかが細かく決まっています。なので、普通のモデルとは少し異なる特殊な技術が要求されます。
K: それと、物語でつないでいるファッションショーなので、ブリデコのモデルは「モデル」というよりも「演者」のような技術が要るんですよね。ただ服を着て立っているだけでなく、何か「この服を着ていて楽しい」ことを見てる人に伝えられる、無言の表現力が必要です。
B: 今回の「宝石姫」は人形の話なので、「お人形っぽく歩いて」とか「どんな人形かをイメージしながらやって」というような指示しています。
K: そういう「演者」の気持ちがないと、ブリデコのモデルは務まらないかな、という感じですね。
着替えも時間との戦い
K: 当日の話でいうと、モデルの衣装をかなり替えるので、早着替えのための工夫をかなりしています。
今はモデル一人毎に服が掛かっているラックが分けられていて、そのモデルが着る服は全てそのラックに集められています。裏に帰ったモデルさんは必ず自分のラックに戻り、担当のフィッターが着替えさせる、というルールになっています。
はじめはブランドごとにラックを分けていたんですが、そうするとひとつのラックにモデル全員が集まってしまうので、動線が悪いんですよね。
そういう裏の動線やルールも、経験がないところからスタッフたちと一緒に何度も試行錯誤をしてできあがってきました。
主演・監督・脚本・衣装製作…全部やっています
B: ブリデコは、ステージ、楽屋、フロアすべてあわせると70人くらいのスタッフがいます。私たち二人は「主演」ですが、同時に「主催者」でもあるので、裏方のスタッフをコントロールする立場でもあります。
もちろん本番では表の「アーティスト」としての顔に注力して、裏方は他のスタッフに任せないといけないんですが、そこの切り替えが難しいですね。練習や準備では私たちが中心ですし、本番でもつい「裏の顔」が出てしまいそうになります。「シナリオ担当」の顔が出て「その台詞違う!そういう言い方じゃない!」とか。
K: 私は「デザイナー」の顔が出てしまって「その服はそういう着方をしないで! そのネックレスも違う!」と言いたくなったりしますね。
B: 本音を言えば、裏方だけをやって、表は誰かに任せてしまいたいという気持ちもあるんですよね。でも結局自分達がやりたいことだから、それはできない。
逆に裏方を完全に他の人に任せて、脚本も書いてもらって、ブランドも他のところだけ、とすると、やりたいものとは違うものになってしまいますから。
K: 海外の映画の「主演・脚本・監督」みたいな感じですね。
──今回は2回公演なので、準備もより大変ではないですか?
K: そうなんです。脚本や演出の指示も、衣装製作やゲストブランド様との出演交渉の打合せ等も、全部倍になってしまいました。
なので本当に大変なんですけど、欲張ってやりたいことをやっているから、楽しいし、頑張りがいがありますよ。
ブリデコを世界に広げたい
──お二人の今後の展望を教えてください。
K: 理想は「見てくれで差別をしない世界」を実現したいです。ゴスロリだからどうとか、あるいは逆にゴスロリじゃないから友達じゃないとか、そういうのではなくみんな「自分の好きなものにおいて平等」という楽しい場を提供できたらいいなと思っています。
ハンディキャップがあろうと、年齢がいくつだろうと、性別や宗教が何であろうと関係なく、みんな自由であるというのが理想です。それが世界中に広がらないのなら、せめてブリデコの中だけでも実現したいと思って活動しています。
B: 現実世界では、どうしても年齢や性別などの「生の自分」に縛られてしまう面がありますけど、それを解き放ったのがインターネットだと思うんですよね。ネット上では、生の自分とは異なる「バーチャルの人格」を作って、自分なんだけど自分じゃないものを表現できるようになったんです。
その「バーチャルの人格」をリアルに持って来られる場所を、ブリデコを通じて提供していきたいです。いずれは世界中でブリデコをやりたいですね。
K: まあ、ちょっと話が広がりすぎましたかね(笑)
ここは「なりたい自分」になれる場所
──最後に、ブリデコに来ようか迷っている人へメッセージをお願いします。
B: 誰でも来てほしいです。誰でもウェルカム。トリプルの服じゃなくていいし、ゴスロリじゃなくてもいい。洋服が好きな人、Kawaiiが好きな人など、いろんな人に来てほしいです。異性装ももちろんOK。「なりたい自分」になってほしいですね。
K: 前にTwitterにも書いたんですが「人間稼業が嫌になった」方はぜひ。自分の中に素敵な世界がある人に来てもらえたらいいな、と思っています。
B: 「周りに理解されない」という寂しい思いがあるなら、まさにうちにうってつけです。ここは超個人的主義を出して良いし、それが受け入れられる場所ですから。
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編集後記
Rokiです。ブリデコvol.9の事前インタビュー、お楽しみいただけましたでしょうか。
BKのお二人とは何度かお会いしているのですが、じっくりとお話を伺うのは今回が初めてです。はじめに「緊張している」と伝えると「なんでですか? 何度も会ってるじゃないですか(笑)」とフレンドリーに接していただけて、おかげで興味深いお話をたくさん伺えたと思います。
今回のショーの話だけではなく、以前から気になっていた「ブリデコ自体の成り立ち」についても聞けたので、個人的には嬉しかったです。
また、上記記事では割愛したのですが、お話の中で、ヴィクトリアンや大正ロマン、Kawaiiカルチャーなどについての話が止まらなったりもしました。時間の都合で泣く泣くブリデコに話を戻しましたが、また別の機会を作って、Kawaiiカルチャーや服飾史について話を聞きたいと企んでいます。
それでは、最後まで読んでくださって、ありがとうございました。ブリデコに行かれる方は、ぜひ現場でお会いしましょう。
Brilliant Star☆デコレーションズ
- 日時:2015年9月21日
- 昼の部:12月(つき)の姫君
ロビー開場 12:00
ホール開場 12:30
開演 13:00 - 夜の部:宝石姫(ジュエリープリンセス)
ロビー開場 16:00
ホール開場 17:30
開演 18:00
- 昼の部:12月(つき)の姫君
- 場所:新宿ReNY(新宿アイランドホール内2F)
- チケット購入:
- 前売り:ローソンチケット
Lコード:74344(昼・夜共通) - 昼の部:2,500円(前売り) / 3,000(当日)
- 夜の部:指定席4,500円(前売りのみ)/立ち見エリア4,000円(当日のみ・学生証提示で500円割引有り)
- 前売り:ローソンチケット
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