音楽とファッションのイベント「Brilliant Star☆デコレーションズ」(ブリデコ)の第11回「白雪姫と聖なる柩」が、2016年6月12日に開催されます。前回で10回を迎え、今回「新たな第1回」を踏み出すことになったブリデコ。KawaCuraでは、主催・主演のBrilliant Kingdomのお二人をお訪ねして、vol.11の見どころについてお話を伺いました。
(取材・文:Roki)
Brilliant Kingdom プロフィール
BABI(左)
文筆業。雑誌「ゴシック&ロリータバイブル」の連載でもお馴染み。ブリデコではシナリオや台詞等、ショー全体の構成を担当。
Kaie(右)
ファッションデザイナー。自身の主宰するブランド「Triple*fortune(トリプルフォーチュン)」のデザイナーを務める。ブリデコでは衣装製作とブランドの出展交渉を担当。
ブリデコとは?
「Brilliant Star☆デコレーションズ」通称「ブリデコ」は、ゴシック&ロリィタの総合的なファッションイベントです。ファッションショーと音楽ライブやナレーション、演劇、ダンスがひとつの「物語」として構成されているのが大きな特徴。
ロビーでは物販ブースが展開され、参加ブランドの商品を買うことができます。スナップ撮影や、一般参加者によるファッションコンテストも人気。参加者の多くは「過剰装飾」と呼ばれる、装飾を大量に施したファッションをしています。
「10+1」回目のテーマは「広がり」!
──記念すべき10回目を終えて、11回目に入ります。今回の見どころはどんなところでしょうか?
BABI (以下「B」): 今回は、普通にカウントすると「11回目」なんですが、私たちとしては「10回が終わっての、新たな1回目」というつもりでいます。
最初の頃はショーとしてまとめることで精一杯だったんですが、10回やってきたことで何となく形はできてきました。それを踏まえて、もう一段グレードアップするために、今回はさらに「広がり」を意識しています。
──「広がり」というと?
B: たとえば、常連の人だけしか楽しめないようになってしまうと、イベントとして「閉じた」ものになってしまいますよね。そうではなくて、新しい人も入って来られるようにしたいんです。
そのために、前回から少し頑張っているんですが、昼の部と夜の部をはっきり違うものにしています。
昼の部は、エンターテインメント性を持たせて、初めて来る人でも分かりやすく楽しく見られるようなものに。ブランドも「ゆめかわいい」系など、いわゆる「ゴスロリ」に含まれないジャンルのブランドさんもお呼びしています。
夜の部はがっつりとゴシック色を出して、常連の人たちも満足できるようにしています。ファッションコンテストも夜の部ですね。
Kaie (以下「K」): 初めての人にとっては、夜の部はどちらかというと「憧れの場所」になるのかもしれません。
K: もう一つの「広がり」としては、ショーだけで完結して、「見て満足した、疲れた、寝よう」で終わらないようにしたいですね(笑)。
もちろん満足してくれれば有り難いことなんですが、その先に興味が広がって欲しいとも思います。
ショーを通じてブランドに興味を持って、お店に遊びに行ったり、買って身につけたり、というところまで行ってほしいんです。ブリデコをきっかけに、想像力が広がる感じでしょうか。
──あえてその余地を残している、と。
K: モデルに関しては、今回はまた少しアーティストさんの枠を増やして、いろいろなタイプのモデルを呼ぼうとしています。
年齢層も広くて、下は小学生のモデルからいますし、 今はまだ実現できていませんが、いつかは年配のモデルさんにもお願いしたいと思っています。
──いろいろな意味で、閉じこもらずに、「広がり」を持っていくということですね。
B: もちろん、ゴスロリという一本の軸はあるんですが、軸はありつつも、境界は無いというところを見せたいですね。
「ゴスロリ」じゃなきゃダメ、「同じブランドなきゃ付き合わない」とか、そういったルールやカテゴリーに捉われず、障壁を取り払っていく。そうやって「広がり」を目指さないと、ゴスロリとしての先が開けてこないんだと思っています。
ReNYのランウェイはブリデコ用に作られた? 手探りのブリデコ黎明期
ruido.org──今の形ができるまで、苦労はたくさんあったと思いますが…
B: 最初の頃は大変でしたね。
「音楽とファッションと物語がくっついた新しいものがやりたい」ということで始まったんですけど、それまでにほとんど無かったものなので、誰もやり方が分からないし、なかなか理解されないわけですよ。
幸い、所属している音楽事務所が新しいことに協力的だったので、スタッフさんたちと一緒に試行錯誤しながら作ってきました。
K: 当時は、今の会場である新宿の「ReNY」とは別のライブハウスで行っていました。普通のライブハウスにはモデルが歩くランウェイなんてないので、資材を借りてきて自分たちで手作りしていました。
B: 会場がライブハウスなので、最初はオールスタンディングでした。
でも、お客さんは大きな帽子を被ってコルセットを絞めて、スカートを何枚も穿いてヒールの高い靴を履いて…という格好で何時間も立っているので、具合が悪くなっちゃったんですよ。
──確かに、普通バンドのライブを見る時は、もっと楽な格好をしますよね。でも、ブリデコではとっておきの服を着たい人も多いでしょうから。
B: そうなんです。これは椅子を入れて座ってもらわないとダメだ、となったんですが、見に来てくれるお客さんが増えて、そのライブハウスでは人が入りきらなくなってしまって。座るのはもちろん、立って入っても入りきれなくなったんです。
それで、場所を移動しようという話になった時に、事務所が新しくReNYを建てることになったので、そこに会場を移動して、お客さんも座って見ていただくようにしました。
そうそう、さっきの「事務所が協力的だった」という話につながるんですけど、ReNYを作るときに「ブリデコをやりやすいように」ということで、ランウェイをつけてくれたんです。
──え? ReNYのあのT字形のステージはブリデコのために作られた、ということですか?
K: そう、うちだけのために作ってもらいました(笑)。あのランウェイの部分は、使わない時は床に収納できます。
ただ、そのステージの形が面白いという理由で、アイドルさんやビジュアル系バンドさんが、ランウェイを出した形でライブをすることも多いみたいですけど。
──最初の頃は、ショーに協力してくれるブランドを集めるのにもやはりご苦労があったのでしょうか?
B: そうですね。ブランドさんもモデルさんも呼ぶのに苦労しました。
今でこそ、ありがたいことに存在が認知されて来て、声をかけたら好意的な返事をもらえたり、向こうから出たいと言ってもらえたりしていますが、最初は本当に大変でした。
K: 世の中にまだないイベントだから、まず、理解されない。「何それ? クラブイベントなの? ファッションショーなの?歌なの?」という感じで、なかなか相手にしてもらえなかったんですよ。
それで、数少ない知り合いに声をかけたり、そこから紹介してもらったりして、自分たちのやりたいことをじっくりと時間をかけて説明していくことで、なんとかブランドさんやモデルさんを集めました。
──イベントを作っていくのも、試行錯誤はあったのでしょうか?
K: リハーサルを様々なジャンルに所属している人に見ていただいたところ、各自の視点から、意見を言ってくださるんですよね。
舞台の人はもっと舞台調にするべきと言うし、音楽の人はもっと音楽を増やしたほうがいいと言う。
B: そういった多様な意見をいただきながら、総合的にイベントを創り上げるという難しさを感じました。時には心が折れそうになったこともありましたね。
それでも、私たちの中で理想みたいなものがあったので、それを曲げませんでした。絶対これをやり遂げるんだという心が無いと実現出来なかったと思います。
──お二人の間で意見の相違はあるんですか?
B: ありますよ(笑)。
K: めっちゃあります(笑)。
B: 毎回そうですけど、たとえば今回のタイトルを決める時も、意見の激しいぶつかり合いがありました。ただ、必ずどこかに着地しますね。
私は文筆業、Kaieさんはデザイナーと専門が違うので、最終的にはそれぞれの専門に関する部分は、お互いにそれを尊重する、という面もあると思います。
K: あと、やっぱりお客さんが見て楽しいか、分かりやすいか、というのは着地点として考えています。 もっと言うと、ゴスロリ以外の人が見ても楽しんで、興味を持ってもらえるかどうかがブリデコの肝かな。
「白雪姫」の原作は、実は怖い話だった?
──今回のタイトルは「白雪姫と聖なる柩」ですね。 白雪姫というとディズニー映画が有名ですが、ブリデコではどのようなものになるのでしょうか。
B: 一般的に知られているディズニーの、黒髪で黄色いスカートを穿いている白雪姫も、私はもちろん大好きです。
でも、倫理的な理由があったりして、もともとの童話から変更されている部分があったりするんですよね。
もちろん、ファッションは「かわいいから着る」という考え方で全然問題ないんですけど、せっかくこういう「お姫様への憧れ」のあるジャンルの服を着るなら、少しもとの童話の背景知識も知ってほしいなって思うことを、お話ししたいです。
──白雪姫というと、柩よりも小人やリンゴのが先に浮かぶののですが、そこで「柩」を選んだのはなぜでしょうか?
B: 白雪姫は、「死んでガラスの柩に入れられる」というところが、私の中では最大級に萌えるんです! 「ガラスのケースに入れられた」という、そこが一番好き。
一旦死んで、ガラスケースの中に入れられて、標本のように飾られるんですね。そして、通りかかった王子が「死体でもいいから、くれ」と言うんですよ。
twitter.com/bk00bk/──死体でもいいから…? ちょっと危ないにおいがしますよね。
B: そう、ある意味危ない話ですね。
他にも、ディズニー版では14歳設定になっているんですが、原作ではもっと幼かったり、家を追い出したのは継母ではなく実母だったり、という違いがあります。
白雪姫もそうですが、伝承に残っている物語には、貧しい時代の人が生き残るための智慧を子供に教える、という側面があるんですよね。
──教訓というか、寓話みたいな?
B: そうそう。そういった寓話的な面にも触れつつ、現代にも通じるような話をします。
昼の部は白雪姫がなぜ愛されたかという方向で、夜の部はお母さんの方に焦点を当てます。で、それに合わせて、カイエさんが夢のあるドレスを見せてくれます。
──ドレスの方の見どころはどうでしょうか?
K: 昼の部は「昼の森の、木漏れ日の中」をモチーフに、愛されるためのドレス、かわいらしい系を。夜の方は、「ガラスの柩」をモチーフに、ゴシックでグログロしくしていこうと思っています。
twitter.com/triple4tune初めての人も、常連さんも、たっぷり楽しめるショーを!
──今回のブリデコは、「広がり」も「白雪姫」も興味深く、とても楽しみです。
K: 実はもう一つ新しい試みをしようと思っています。今回昼の部では、初めてTriple*fortuneを買う方に向けて、「Triple*fortuneのスターターキット」を販売します。
トリプルは普通にフルで買ったら10万円を超えてしまいますけど、スターターキットは2万円程度で、靴以外のフルコーデができるようにしています。
袋ごとに私が考えたコーディネートが入っています。服が同じでも、ひとつひとつコーデを変えているので、楽しみにして欲しいですね。
──初めての人は、特に嬉しいですね!
B: そう。ゴスロリなんて知らない、という人も来てくれると嬉しいです。でも、もちろん常連さんも満足がいくようにしますので、楽しみにしていてくださいね!
──入り口は入りやすく、それでいて奥は限りなく深く、ですね。
K: はい! ゴスロリをショーとして定期的に発信しているのは、おそらくうちだけですから、そこには誇りを持っていたいです。特に夜の部はハードルを高くしているので、期待して来て欲しいです。
イベント概要
Brilliant Star☆デコレーションズ vol.11「白雪姫と聖なる柩」
- 日時:2016年6月12日
- 昼の部:side 白雪姫
ロビー開場 12:00
ホール開場 12:30
開演 13:00 - 夜の部:side 聖なる柩
ロビー開場 16:00
ホール開場 17:30
開演 18:00
- 昼の部:side 白雪姫
- 場所:新宿ReNY(新宿アイランドホール内2F)
- チケット購入:
- 前売り:ローソンチケット
Lコード:76089(昼・夜共通) - 昼の部:3,500円(前売り) / 4,000(当日)/立ち見エリア3,000円(当日のみ・学生証提示で500円割引有り)
- 夜の部:指定席4,500円(前売りのみ)/立ち見エリア4,000円(当日のみ・学生証提示で500円割引有り)
- 前売り:ローソンチケット
リンク
編集後記
Rokiです。vol.9、vol.10に引き続き、今回もブリデコの事前インタビューをさせていただきました。お楽しみいただけましたでしょうか。
当初の構成予定にはなかったのですが、話の流れから「ブリデコの最初の頃の苦労話」をお話いただけたのがラッキーでした。「ReNYのランウェイはブリデコのために作られた」というのには驚きました。
この日のインタビューは、ブリデコ以外にも、Triple*fortuneの撮影会イベント、海外のロリータお茶会事情などについてもお話を伺えました。そちらについても、別の記事でお伝えする予定です。
それでは、最後まで読んでくださってありがとうございました。ブリデコに参加される方は、ぜひ現場でお会いしましょう。青いスーツを着た男を見かけましたら、お声をお掛けください。「記事読んだよ!」と言って頂けると大変嬉しいです。