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シュルレアリスムから感じた「カワイイ」の境界線
―― Sedmikraskyの作品を見ると、カワイイだけじゃなくって…。
「カワイイ中にもちょっと奇妙な感じや毒っぽい感じの相反する要素が入っていると思います。そういった二面性があるものが好きなんです。」
―― あぁ、いいですね!そういうのすごく好きです。
「ありがとうございます!Sedmikraskyを始めてからこういうモチーフの作品を作るようになってきました。」
―― チェコの映画が好きだと伺ったのですが。
「はい、ブランド名も「ひなぎく」というチェコ映画の影響です。カワイイ映画なんですが裏の意味もあったりして。」
―― 裏の意味ですか?
「チェコって、自由に表現が出来ない時代があったようで、映画のセリフの中に反社会的なメッセージを込めている部分があるんです。」
―― 映画のセリフを使って、社会体制を批判しているような?
「そうです、そうです。それをみて国民たちが頷いているような感じです。」
―― 君の言いたいことは分かるよ、という感じ?
「ですね。60年から70年代ぐらいの映画に多いと思います。映像的には一見可愛いんですが、色々な手法が使われてメッセージが込められているんです。」
―― チェコの映画にいつ頃出逢ったんですか?
「専門学校の時に、DVDが沢山あるセンターがあって、そこでその時代のチェコ映画が1本だけあって、それを見たらすごく感化されたんです。その後、「ひなぎく」もすごく好きになりました。」
―― どんなところに感化されたのでしょうか?
「「ひなぎく」で言うと、女の子たちが主人公なんですが、ファッションも60年代ファッションで可愛くて、少女性がある表面的な可愛さから入ったんです。それで調べていくうちにすごく深い映画だという事を知って、もっと深くチェコ映画を知りたくなって、他の作品を見たりしました。ヤン・シュヴァンクマイエルという映画監督の作品にも影響を受けていると思います。」
(moegiさんがチェコに旅行した際に出会った作品達)
―― 初めて聞きました!どんな作品を撮る監督なんですか?
「映像としては少し現実離れしたような、奇妙な感じのものが多いと思います。CGとかが無い時代なので、人形や粘土で出来たモチーフを少しずつ動かして撮っているんです。この監督は80歳を過ぎていらっしゃるんですが、いまだに映画を撮ってらっしゃるんです。映画の他にもコラージュや絵を描いたり、色々手掛けてらっしゃるんです!」
―― へぇぇ!すごいですね。
「そういう映像作品などのワンシーンからもインスピレーションが浮かびます。」
―― チェコ映画との出会いは大きかったんですね!人体モチーフも映画からのインスピレーションですか?
「シュルレアリスムアートからも影響があるのかもしれません。」
―― シュルレアリスムアート。
「はい、シュルレアリスムアートが好きな方だと、人体モチーフを使われる方、結構いらっしゃると思うんです。先日、Freak Showを行ったメンバーも割と人体モチーフ使っています。後は、例えば画家だと、ダリなんかもそうですよね。」
―― なるほど、確かに皆さん使っていますね。moegiさんはどういう人体モチーフを表現に使用されているんですか?
「例えば、唇、目、指、耳…。」
―― 顔のパーツが多そうですね。それを使ったとしても、リアルに表現するわけじゃなく…?
「じゃないです。まずカワイイって思えるように、良いバランスを取ります。」
―― ほぉぉ。シュルレアリスムというと、「形式」を壊していく文学から始まったと認識しているんですが、通常だったら「こうだよね!」という形式から離れていく感じでしょうか?moegiさんはシュルレアリスムアートをどういう視点で見ていて、どういう風にバランスを取っているのかな、と思ったのですが。
「うーん、そうですね。アートというよりもあくまでファッションの中のシュルレアリスムと捉えています。ファッションが根底にあって、『カワイイ』という表現があり、その上にシュルレアリスムがあるような感じでしょうか。身に付けられるというのは大前提です。」
―― 身に付けられるファッションが前提。
「はい、作品をシュルレアリスムと謳っているわけではないんですが、考え方は作品に込められていると思います。言葉にするのは難しいところですが。人体モチーフを使いますが、それをリアルに表現するだけではなく、まず『カワイイ』って思ってもらえるようなラインにしています。『奇妙』まではいかないという。」
―― そういうラインがあるんですかね。
「そうですね、私の場合はここを超えたら、ちょっと気持ち悪いだろうっていう感覚があるので、『カワイイ』というラインをギリギリまで探るようにしています。」
―― カワイイって、一言で言ってもなんだか難しいですね。moegiさんがカワイイと思う基準ってありますか?
「私の場合はカワイイというのは、例えば作品の場合はその中に相反するものが含まれているという感覚です。基準は、そうですね、自分の感覚だと思います。」
―― お客さんもそういう感覚を共有してくれる方ですかね。
「そうだと嬉しいです。shop CABARETで購入してくださる方も、ファッションが好きな方、ファッションのことを長く考えてこられたんだろうな、という方が多いです。」
―― そうなんですね。Sedmikraskyの作品はインパクトがある、例えば人体モチーフなんかもあったりしますが、私の周りには、「怖い」という意見の方もいたりして…。私はとてもカワイイと思うんですが、やっぱり感覚を共有するのは難しいなぁ、と思いました。
「感覚って、人によって違うので共有するのは簡単ではないですよね。Sedmikraskyの作品も、多くの人にカワイイと思って欲しいわけではなくて、数としては少なくても、カワイイと思ってもらえる人に届けばいいな、と思って作っています。」
―― 例えば、お客さんの感覚とギャップが出てきた場合、お客さんに合わせて作品を作っていくという事もあるんでしょうか。
「うーん、そうですね。やっぱり、自分が好きな物を作るというのが基準になると思うので、根本的な部分は変えないと思います。あとは、自分の好きな物が変わっていけば作品も変化していくと思います。」
キーワードは、二面性、相反、秘め事、内向性、…etc
―― 「二面性」「相反」というキーワードが今までのお話でも出てきたと思うのですが、moegiさんにとって結構キーワードとなっているのでしょうか。先ほどのチェコ映画のお話もそうですが、裏に潜ませるメッセージというのもお好きですよね。
「そうなんですよ。多分、少女や乙女という生き物は、秘密や秘め事がすごく好きなんだと思います。少女ではなくなったとしても、それを引きずっている感覚。」
―― moegiさんにも少女性を引きずっている秘めたる思いがあったり…?
「それは、秘密です!(笑)」
―― 秘め事ですもんね(笑)。ちなみに、二面性というテーマだと、いかがでしょう?
「そうですね、本当は内向的だったんですよ、子供の頃は。そういう部分はまだ自分の中にあるんだと思います。」
―― だからこそ、自分の作品がコミュニケーションツールになるのが嬉しいという事にも繋がるんでしょうか?
「あ、そうかもしれません!」
―― 内向的な感覚がある方が、自分の作品によって人と繋がるというのを喜びとして感じるという想いが何となくあるのかな、と思いまして。
「言葉にしたことはなかったですが、確かにそういう部分があると思います。」
―― なかなか質問されたり言葉にすることもないですよね。
「はい、自分に問いかけていた時期もありましたけど、今はもう突っ走っている感じで。」
―― 内向的だとしたら自分に問いかけて自己ループに入っちゃう事もあるので、外に向いて表現していくっていうのが大事ですよね。
次回に続く・・・